性に疑問を持つ人も持たない人も読んでほしい「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」

Twitter広告でたまたま
「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」
のコミカライズ版を知って、
原作小説もあるということだったので
昨日朝に一気読みしました。

おもしろい、などという簡単な一言で
くくってはいけない、しかしおもしろい。
読みながら、自分自身の中へ
深く沈んでいく感覚がした作品でした。

わたしは何なのか、
わたしはどういう
価値観を持っているのか、
わたしは自分をどう扱いたいのか、
どう扱われたいのか。

自分の性や性的指向(嗜好)に
疑問を持っている方、
物事を深く考え込みたい人には
特におすすめの作品です。
(そうでない人にも読んでほしい)

カクヨム内特設サイトはこちら

全話読める小説ページはこちら

* * *

そういえばわたし、
この作品の存在自体はNHKで
先に知っていた気がします。

NHKで「腐女子、うっかりゲイに告る。」
というタイトルで2019年4月に
ドラマ化されているからです。
(先週から再びNHKで再放送されています)

※知らない方のために念の為補足。
腐女子=男性同士の恋愛によって
活動エネルギーを得ることのできる
女性の体を持った生命体。
体が男性の場合は「腐男子」と呼ばれる。


わたしは正直、タイトルだけで
拒否反応を示しました。
「また腐女子に媚びた作品作りやがって」
と思ったのです。

歯に衣着せぬ言い方をすると、
わたしは腐女子に媚びた風潮が大嫌いです。
(ちなみにわたしは元々は腐女子ですが、
わたしが腐女子を卒業する前後くらいで
その風潮が顕著になった記憶があります)

「ほ〜ら、お前らこういうの好きだろう?」
というビジネス臭や、
「腐女子ってマジやばいよね」
という侮蔑を含んだギャグネタに
しているのを感じるから。

なので「腐女子、うっかりゲイに告る。」も
どうせそういうやつなんだろうと
勝手に感じていました。
なので、死んでも見るかと思いました。

まあでも、ドラマ版見ずに
小説を読むことができて
よかったのかもしれない。

少しネタバレになるかもしれませんが、
ラストまで全部読むと、
この小説のタイトルは
「彼女が好きなものはホモであって
僕ではない」以外ありえない、
と思うからです。

ただし、「ホモ」は現在
差別用語としてとらえられているので、
NHKさんとしてはタイトルを
変えざるを得なかったんだろうなあ、
と思います。

あと、この作品は
「ホモ」という呼び方に少しイラっとする、
いわゆる本当の「ゲイ」の方に
見せたい作品なのかもしれない。

わたしのように「腐女子」という
単語が入っているだけで
イラっとして「死んでも見るか」
と思う女性がいるように、
「ホモ」という単語が入っているだけで
イラっとして「死んでも見るか」
と思う男性もいるのかも。

でも多分、そういう人こそが
知った方がいい作品
なんじゃないかと思います。

※……ってここまで書いて思ったけど、
同じ「腐女子」がタイトルに入ってても
「腐女子のつづ井さん」はめちゃくちゃ
好きだなと思いました。
現腐女子の方や元腐女子の方も
楽しめると思うので、こちらもぜひ。
 ↓
腐女子のつづ井さん|pxivコミック

裸一貫! つづ井さん|CREA

↑Kindle版・紙の本はこちら

* * *

ところで先日、noteに
「自分はXジェンダーで
パンセクシュアルではないか」
という記事を書きました。

自分はXジェンダー(FtX)とパンセクシュアルじゃないかと思った話|巴|note

ずっと前からうっすら、自分の性自認(ジェンダー)にも性的指向(セクシュアリティ)にもモヤモヤはあった。 けれどわたしは「ちょっと変わった女」というだけで、自分が女であることに疑問も嫌悪感も抱いたことはないし、「性同一性障害と呼ばれる人とは違う」と思っていた。(今となれば心の性別と体の性別が違うだけで病気とか障害と呼ぶのも何かイヤだな、と思う) 最初にモヤモヤを感じたのは、数年前Twitterで「パンセクシュアル」というセクシュアリティを知った時だった。 パンセクシュアルについて 簡単に言うと、相手の性別にこだわらず、全ての人を好きになれる人。 男性も女性も好きになれるバイ

正直これを書くのにもけっこう悩んでいたけど、
「彼女が好きなのはホモであって僕ではない」
を読んだ後は、
ゲイの人がゲイとカムアウトすること、
そしてレズビアンの人が同じく
カムアウトすることに比べたら、
全然大したことないのではないか、と思いました。

だってわたしの周囲の人はきっとこう言います。
「でも女性の格好できるんでしょう?」
「でも男も好きになれるんでしょう?」
「今付き合っているのは男の人でしょう?」
「「「ならいいじゃん」」」と。

問題なのは男が男を好きになること、
女が女を好きになることなので、
どちらも愛せるというのは大した問題じゃない。

自分的には「大したことないじゃん」
と言われるのは嫌だけど、
でも仕方ないことだよな、とも思います。
(この作品を読んだ後は、
「嫌だ」って自分が思う気持ちも
大事にしてあげたいなと思うけど)

「異性を好きになれる人」は
大した問題じゃないんですよね、きっと。
「同性しか好きになれない」ことが
大問題なのだから。

この作品を読んで、わたしは
「いろんな人と話がしてみたいな」
と思いました。

Xジェンダーの人、
パンセクシュアルの人。
ゲイの人、レズビアンの人。
体が女で心が男で、
でも女装がすごく好きだから
結果見た目的には問題ない、
という人もいるかもしれない。

でも前に、友人から
「あなたみたいな女、
ゲイは嫌いだと思うよ」
って言われてしまったので、
ちょっと怖い。

ただ
「女は男性を好きになり、
結婚し、子どもを産むのが
当たり前」だと
心底思っている人と
話しているのが
時々疲れることがあるんです。

っていうか、最近
「そのせいで疲れていたのか」
と気づいたんですが。

わたしの友人にひとり、
結婚にも出産にもこだわらなくていい、
という女性がいました。
彼女はよく嘘をつく人だったので
真実だったのかわからないけれど、
自分は子どもが産めない体だとも
言っていました。
もう死んでしまったので、
本当のところは一生わからないけど。

人生の岐路に立つたびに何度も思います。
今のわたしで彼女と話したらどうなるだろう。
彼女はわたしに何を言ってくれるだろう。

ちなみに
「彼女が好きなのはホモであって僕ではない」
の主人公・安藤純にもそういう存在がいます。
わたしは純とその人との関係性の
描き方もすごく好きです。

というか、作品全体を通して
人間関係の描き方がすごくいいなあ、と。
創作小説なのでファンタジーかもしれないけど、
すごくリアルなんです。
作中の「ケイトさん」が
実在していたら会いに行きたいくらい。

リアルといえば、わたしは
「Track3:The Show Must Go On」
くらいまで主人公の安藤純が
ちょっと「嫌いだな」と思いました。

でもたぶん、思春期の自分と
似ているから嫌いなんだろうな。
自分は特別に選ばれし
不幸な人間だと思っていて、
周囲の人間が傷つくことを
考えていない感じがわたしそっくり。
「自分にしか関心がない」感じが。

とりあえず気になった方は
ぜひ読んでみてください。
ネットで小説読むの苦手って方は、
紙の本もあります。

小説版↑
(カクヨム掲載版からブラッシュアップ
しているそうなので気になる)

漫画版↑

そういえばこれが「青春小説」
だからかもしれないけど、
なんとなく映画版「聲の形」を
観た時と同じ感情が
芽生えたシーンがいくつかありました。

わたしはどうも
「人と違う何か」を
持っている人と、
「いわゆる普通の人
(感覚が一般的な人?)」が
関わる作品が
好きなのかもしれません。

ごきげんよう、さようなら。

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